平成15年(2003)4月7日、宝塚ファミリーランドが、多くのファンに惜しまれつつも
91年の歴史に幕を閉じた。明治44年(1911)、箕面有馬電気軌道(現・阪急電鉄)が
開設した「宝塚新温泉」に始まり、大正3年(1914)にはその余興として宝塚少女歌劇
の公演を開始。その後、動物園や植物園ほか多彩なレジャー施設を併設し、新しい発
想による大遊園地として愛された。大正~昭和の時代、宝塚ファミリーランドは、まさに
小林一三が目指した郊外型ユートピアであり、休日に電車に乗って出かけたくなる装
置が満載されていた。
例えば、昭和27年(1952)に設置された日本初のジェットコースター「ウエーブコース
ター」、のべ1500万人以上が訪れた「大人形館(世界はひとつ)」(昭和42年設置)。
平成以降も園内を5つのガーデンに分けて多彩なショーやイベントを展開し、訪れる
家族連れを楽しませた。

宝塚ファミリーランド閉園後、その跡地では、「緑溢れるエンタテイメント・ビレッジ 宝塚」というコンセプトのもとに再開発が進められている。「ガーデンゾーン」、「商業系開発ゾーン」、「住宅開発ゾーン」、「歌劇ゾーン」の4ゾーンで、先行したのが、同年9月26日にオープンした「宝塚ガーデンフィールズ」(ガーデンゾーン)である。「緑やペットと共に暮らす豊かなライフスタイル」をテーマにした広大なパークは、その後、徐々に充実度を増し、今や新しい宝塚を代表するエリアとして、憩いのひとときを過ごすカップルや家族連れで賑わいを見せている。
一方、「家族と過ごす楽しい時間」の提供する「商業系開発ゾーン」でも、平成17年(2005)4月から6月にかけて次々に商業施設がオープン。日々の生活を潤す提案やイベントが実施され、市民に愛されるエンタメ空間として定着しつつある。また、「住まうことがステータスとなる定住型空間」をテーマに掲げる「住宅開発ゾーン」でも、居住文化創造都市・宝塚にふさわしい質の高い居住環境の提供を目指して、マンション計画が進んでいる。「歌劇ゾーン」については、当面は現状を守りながら、「文化溢れる華やかなエンタテイメント空間」として宝塚歌劇のイメージを強化していく計画である。歴史ある宝塚ならではの華やかさと文化を活かすことを視野に入れた、宝塚ファミリーランド跡地再開発。今後の展開に、大きな期待が寄せられている。

「ガーデンゾーン」、「商業系開発ゾーン」、「歌劇ゾーン」、「住宅開発ゾーン」の4ゾーンで進行中の宝塚ファミリーランド跡地再開発。その中で先行して進められたのが、「ガーデンゾーン」の整備である。「ガーデン=庭」に、「フィールド=広場・場」を組み合わせた「宝塚ガーデンフィールズ」というネーミングに決定したのが、平成15年(2003)6月。同年9月26日のオープン(英国風ナチュラル庭園はプレオープン)以来、「緑やペットと共に暮らす豊かなライフスタイル」の一端を担うゾーンとして知名度を高めてきた。
フィールズには、「Feel = 感じる」という意味も込めらているが、「宝塚ガーデンフィールズ」は、まさに、ゆったりと緑を感じられる憩いの場であり、宝塚を愛する人々の心のオアシスとなっている。
計画は、既存の緑溢れる空間や、歴史的な建物を活用することに重きを置いて進められた。例えば、「シーズンズ」と名付けられた英国風ナチュラル庭園には、既存の地形や植物、歴史的な建物を巧みにデザインに取り入れている。庭・園芸分野で先駆的な役割を果たしてきた雑誌「BISES(ビズ)」などで活躍中の英国人ガーデン・デザイナー、ポール・スミザー氏のデザイン・設計によるもので、英国貴族の館の伝統的なスタイルを再現した庭園は、関西初の試みとして話題を呼んだ。また、翌年春のグランドオープン時には、英国の自然と歴史的文化財を守る団体「英国ザ・ナショナル・トラスト」より、友好の証しとして「シシングハースト・カースル・ガーデン」内「ホワイトガーデン」の象徴である白い蔓バラが贈られ、本場の庭園の香りが一層身近なものとなった。
ゾーン内には、ほかに、犬とのふれあい施設に、愛犬を遊ばせる施設を併設したペット・パーク「DOG RUN-DO」(ドッグ・ラン・ド)、ペットと共に暮らす暮らすライフスタイルを提案するペットショップ「FOBY」、そして、旧「宝塚歌劇記念館」のレトロな風情を活かしたダイニングレストラン「中国名菜 龍坊(ロンファン)宝塚」が出店。東京の六本木・赤坂で人気を博している「龍坊(ロンファン)」は、初の関西進出とあり、注目を集めた。さらに、平成17年(2005)9月、阪急直営の健康美食「SEED' KITCHEN」がオープン。愛犬を連れ、「DOG RUN-DO」を見渡しながら、丹波篠山地方の身体にやさしい食材を使った料理を楽しめる。
「宝塚ガーデンフィールズ」は、宝塚ファミリーランド時代の趣を残しながらも、心豊かな暮らしの舞台としての役割を得て、新たな道を歩み始めたと言えるだろう。

「宝塚ガーデンフィールズ」の西側、花の道をはさんで歌劇ゾーンと隣接する商業系開発ゾーンは、「緑溢れるエンタテイメント・ビレッジ 宝塚」という全体開発のもと、平成17年(2005)春の開業を目指して開発が進められてきた。
テーマは、「家族と過ごす楽しい時間」。“健康”で “ゆとり”ある暮らしをサポートし、日々の生活を潤す提案や楽しいイベントを織り込んでいくという計画は、今、確かに実現しつつある。
ゾーン内は、2階建ての「商業棟」と、「ハウジングガーデン」で構成。「花の道」から宝塚ガーデンフィールズにつながる歩行者空間は、緑豊かなガーデンプロムナードとして整備を推進。平成17年(2005)4月に、一部オープンにこぎ着けた。
商業棟には、平成17年(2005)6月、1階に「ベビーザらス」が、平成17年(2005)7月、2階にフィットネスクラブ「ティップネス」がオープン。
「ベビーザらス」は、全国に142店舗の「トイザらス」を展開する日本トイザらス株式会社が、「21世紀は子供たちの世紀にしたい」という理念のもと、新浦安(千葉県浦安市)、府中(東京都府中市)、武蔵村山(東京都西多摩郡)などで展開するベビー総合専門店。世界中から厳選したベビー用品が常時12,000点以上取り揃えられ、専門知識を持った店員によるアドバイスを受けられるほか、タッチケア講習会など、店内イベントも随時開催されている。
一方、「ティップネス」は、「宝塚でしか出会えない」、「ゆとり・質感・距離感」をテーマにした「いるだけで気持ちいい」という新しい価値観を提示。要望に合わせた多種多様なプログラムが用意され、生活密着型のフィットネスクラブとして注目されている。NEWヨガと言われるハリウッドヨガなどの最新プログラムや、ピラティスなど、話題のプログラムも組み込まれ、地域のコミュニティ形成の核になる施設としても大いに期待される存在である。
また、商業棟に先立ち、平成17年(2005)4月1日阪急直営のイタリアンレストラン「イゾラベッラ オペレッタ ア 宝塚」がオープン。神戸・元町で人気の「コンソランテ イゾラベッラ エ バール」の姉妹店で、「龍坊(ロンファン)」同様、地域を代表するレストランとしての地位は確かなものとなっている。
続いて同月16日に開業した「阪急宝塚ハウジングガーデン」は、住宅メーカー各社が工夫を凝らした最新のモデルハウスを提案する総合住宅展示場で、花と緑に彩られた空間である。場内には、旧宝塚ファミリーランドのメリーゴーランドが残され、陸橋でつながった「宝塚ガーデンフィールズ」とともに、家づくりのプランを立てながら、ご家族でゆったりとした一日を過ごせるのが特長。「宝塚ガーデンフィールズ」と連携したイベントを通じて、多くの家族に楽しい時間を提案し続けていくことになった。

「住宅開発ゾーン」の開発は、「住まうことがステータスとなる定住型空間」をテーマに、宝塚にふさわしい高品質の居住環境の提案を目指して進められている。具体的には、新設する道路によって沿道型施設用地と住宅建設用地に分け、宝塚のハイセンスなイメージを活かした中高層・低層集合住宅の開発を計画。コミュニティの舞台となる景観・緑の活用とともに、ファミリーのみならず、各ライフステージに応じた多彩な住戸が創造されるという。
その核として、「宝塚ファミリーランド跡地マンション計画」(阪急グループ創業100周年事業)の名のもとに推進されているのが、ライフスタイルのシンボルとなる2棟のタワーマンション「ジオタワー宝塚」。宝塚ファミリーランド跡地をより有効に活用し、駅から続く緑豊かな街並み、文化教育の在り方も視野に入れたこの事業は、これからの宝塚ライフスタイルにふさわしい街づくりの一貫として、大きな期待を担っている。
基本コンセプトは、豊かな自然と暮らしが調和した風景を活かし、この街でしかできない生活の未来をしっかりと描き込んでいくこと。長きにわたって培ってきたお洒落で良質な風景を活かし、さらに魅力的にリードする住空間を創造するとともに、駅前の賑わいから、歌劇の華やかさ、宝塚ガーデンフィールズの緑、そして教育施設である関西学院初等部を花のみちでつなげることで、住宅の価値を一層高めるよう考慮されている。
タワーマンションには、暮らしをサポートするコンシェルジュカウンターやショップ、シアタールーム、キッズスタジアムなどが設けられるほか、先進のセキュリティシステムにより、上質のライフスタイルを提案。地震から住まいを守る免震構造、環境・省エネに配慮し、電気と熱を同時につくるコージェネレーションシステムが採用されることも注目に値する。
竣工・入居予定は、平成21年(2009)2月から。
宝塚の文化風土を楽しみながら、自然やペットとともに暮らす心豊かなライススタイルが広がる日々は、もう遠い未来ではないのである。

大正3年(1914)の誕生以来、90余年にわたって歌と踊りのエンタテイメント文化を開花させてきた宝塚歌劇の舞台、宝塚大劇場のある「歌劇ゾーン」は、長年にわたって培われてきた宝塚の華やかさと文化を体感できるゾーンである。歌劇ゾーンの再開発は、「文化溢れる華やかなエンタテイメント空間」をテーマに、宝塚歌劇のイメージを強化していく方針であるが、当面は、現状を守っていくことになっている。
関連する動きとして注目されるのは、「花のみち」から観光プロムナード、桜橋へと続くプロムナードの整備である。歩道と公園(計画中)との一体化、バリアフリー化を進めるほか、桜橋の面影を残す同事業は、宝塚の歴史と文化を守る上でも、花のみちが暮らしの舞台としての役割を担う上でも、重要な意味を持つものである。
また、宝塚歌劇文化を礎に、新たな宝塚文化を創造するための事業として、歌劇ゾーンとは少し離れた場所ではあるが、宝塚市によって、宝塚音楽学校旧校舎の活用が計画されている。1階は、宝塚文化の創造・発信の場として、講堂を再現した文化交流ホールに。常時は約100席のカフェとし、持ち込み企画によるライブ公演も積極的に受け入れる方針。2階は、学びと実践のために本科ルームを講座室として活用。予科ルームを創造サロンにするほか、音楽学校記念展示室も設けられる。3階には、教室の雰囲気を残したレッスンルームとして活用する。
さらに、隣接の地には、市民のくつろぎのための公園として、旧校舎と一体となったメモリアル・シアターガーデンが設けられる。音楽学校ゆかりの音楽を流す記念公園らしい演出、ツタの再生と校舎が引き立つ植栽、野外イベント等も計画されている。
歌劇ゾーンの再開発に先駆けて動き始めたこの事業は、宝塚の豊富な歴史・文化資源を守り、新たな文化を創造する基盤の役割を果たすものとなりそうである。